2018年8月29日水曜日

包丁・砥石・俎板・ほか

焼く前の状態の焼鳥を作ることを「串打ち」という。


鳥肉を包丁で捌いて串に刺す、単純ながらも実に奥が深く楽しい作業だが、各部位ごとの具体的な串打ちオペレーションを見ていく前に、ここでは串打ちに必要な道具類について考えたい。

まずは包丁である。
私はもともと料理が好きなわけでも得意なわけでもなく、40過ぎのくせに焼鳥とカレーしか作れない。もちろん調理器具の知識もないので特に包丁にもこだわりはなく、Amazonレビュアーのご神託に従い藤次郎の牛刀を購入した。DPコバルト合金なんたらという210mmのやつで、5,000円ちょうどだった思う。

ちなみに俎板は樹脂だと刃を痛めるという風潮があり、IKEAで買った木製のものを使っている。990円の割にとても使いやすく、最初に油を引くのと、洗剤を使わずぬるま湯とスポンジで丁寧に洗って塩と熱湯で消毒することを怠らなければ使用中にどれだけ血塗れになろうともいつまでも綺麗に使える。


肉も野菜も魚介も全てこの藤次郎で賄っていて全く不満はないのだが、しばらく使っていると鳥皮がなかなか切れなくなったり、トマトや肝の断面のエッジが崩れたりするので、定期的に砥ぐ。
最初はホームセンターで砥いでもらっていたが面倒なので砥石を買った。
Amazonではいろんな怪しいメーカーが中砥と仕上げ砥を裏表でくっつけた砥石を格安で売っているので飛びついたが、これはやめた方がいい。一回研ぐだけでごっそり石が削れ、毎回面直ししているうちにあっという間に薄くなってしまったので即捨ててAmazonで高評価なシャプトンに乗り換えた。
中砥と仕上げ砥を揃えるのが勿体ないので間をとって2000番にしたが、何回か砥いでも目に見える凹みはない。仕上がりも上々で非常におすすめである。


砥ぎ方はYouTubeなどで腐るほど出てくるので私の素人砥ぎなどよりそちらを参考にされたい。

さて、続いて竹串について考察したいが、少し長くなったので一度ブレイクしよう。
余談として、先述のカレーについて写真を載せておく。


右から反時計回りに、茹で玉子のカレー、マラバールシュリンプ、ラッサム、夏野菜のピクルス、ライタ。
米は国産の長粒米・ホシユタカにポディを振りかけている。
私はカレーの激戦区・大阪市内中部あたりに住んでおり、有名店にはほぼ全て足を運んでいるが、カシミールとバンブルビーを除けば、味はそこらへんの店におそらくは負けない。といっても、南インド料理の伝統的かつスタンダードなレシピに忠実に作っているだけであるが。

持論だが、寿司や蕎麦などは費用面・技術面などからプロとはなかなか勝負にならないが、焼鳥とカレーだけはその余地がある、と勝手に思っている。カレーの場合スパイスは20種以上必要になるがどれもネットで安価で手に入るし、機材も材料も技術も家庭用で全く問題ないし、気温と湿度によって水の量を自在に変えられるような神業もいらない。
カレーは焼鳥に劣らず素晴らしい、神からの贈り物だと思う。

閑話休題、竹串の話に移る。

2018年8月27日月曜日

炭を熾す

炭火焼鳥に使えるコンロには、珪藻土でできた七輪やバーベキューグリル、耐火煉瓦を使った焼鳥専用のプロユースな什器などいくつか種類があるが、コスト・サイズ・重量などを慎重に検討した結果、高品質低価格の代表選手、Colemanのテーブルトップグリルを選んだ。Amazonで3,000円を切っていたと思う。


珪藻土切出しの七輪などは高い保温性能により炭の持ちが良い上に遠赤効果も高められるらしく、何より本格派っぽいので大いに迷ったが、水気厳禁で焼面の奥行が微妙に足りないか過剰に大きいモデルしか見つけられず、しかも重さが10kgを超えるため取り回しに不安があり、さらには価格も5倍以上するためひとまずは見送った。なお、うちのColemanでも一回の焼鳥で消費する炭のコストは130円程度なので、個人的には炭の持ちに不満はない。

他に炭火を扱う上であった方がよい備品としては、火熾し器、火消し壺、着火剤、チャッカマン、火挟、軍手、くらいだろうか。火熾し器と火消し壺は一つになったものが便利だろう。私はこれまた高品質低価格の申し子、CAPTAIN STAG社製のものを使っている。これもAmazonで3,000円前後だった。まことに安上がりな趣味である。


炭は熾火に触れると簡単に火が回るので、火熾し器の底面には細かくなった消し炭(前回使用したあと酸素を遮断して鎮火させた炭)を敷くとよい。消し炭は簡単に火がつくからだ。そして火熾し器の中心部分には非常に熾り難い備長炭を、周辺部分にやや熾り難いオガ炭を、それらの隙間に熾り易い消し炭を促進剤として詰めておけば、特に苦労もなく全体に火が回る。





ちなみに、そのままでは長すぎるオガ炭は火挟の柄を打ち下ろしてやれば簡単にポキっと折れる。


2,30分くらいで炭の7,8割程度に火が回るので、そこから焼き器に移す。言うまでもないが死ぬほど熱いので十分に注意すること。ちなみにうちのColemanはロストルが取り外し&持ち運び可能なのでアルミホイルを二重に敷いて養生している。こうすることでロストルもあまり汚れず、火消し壺に入れるほどではない細かい炭の消火がホイルを畳むだけで出来るので後片付けが非常に楽になる。

炭の組み方は前回説明したとおり、底にオガ炭、上に備長炭を乗せ、手前は網に触れる程度に炭を積み上げ、奥は低くして火力に差を出すようにする。
この火力差についてはなんとなく予想できると思うが、追々説明したい。



必要な炭の量は焼き器によって異なると思うのでなんとも言えないが、上記の通りに組むにはどれくらいの炭があればよいのか、しばらく練習すれば感覚がつかめてくると思う。私と全く同じ什器を使うなら上記の写真を参考にされたい。
焼いている途中に火が進んで炭が空いて来たらフォークで網を釣り上げて火挟で炭を右か左どちらかに詰めていく(私の場合は左詰め)が、手前の高さは維持する。
よく炭火の理想は「強火の遠火」と言われるが、焼鳥に関して言えば「強火の近火」が原則である。短時間で旨味を閉じ込め、表面を焦がすことなく中も加熱するにはどちらが適しているか、実際に両方を試してみると得心が行くだろう(ただし、たれ焼きとつくねはアプローチが若干異なるので後述)。
この炭火構成ならだらだらと三時間ちょっと焼いても炭は半分ほど残っているはずなので、終了後は火消し壺に戻して蓋をする。2,3時間で完全に鎮火するので次回以降消し炭として活躍してもらう。

少し長くなってしまったが、自宅室内で炭火焼鳥をするための環境構築については、これで一通り触れることができたはず。忘れていることがあればその都度追記しよう。

ここからは、いよいよ鳥を仕込む。

2018年8月18日土曜日

炭を選ぶ

炭は言うまでもなく消耗品である。

私の場合、調味料などを含め、消耗品を選ぶ基準は「値段が安くいつでも簡単に手に入るもの」と決めている。旅行先で良さげな海塩を見つけたり、誰かからその人の地元の希少な醤油をいただいた時には飛び上がって喜ぶが、日々の焼鳥には使わない。
味付けの精度がブレるからだ。
同じ材料で反復練習しなければせっかく分量の感覚や投入のタイミングなどをつかんでも味の再現性を保てない。そのため、出来るだけ家計に優しく、必要な時にいつでも買え、おそらく当分の間は廃版にならないであろうメジャーな製品を選ぶようにしている。

炭もその視点で検証した結果、最初はAmazonで一番レビューの多い10kgで2,000円程度のオガ備長炭を選んだ。


これは備長炭とは言いながらオガクズを成形した竹輪のような人工炭で、火力が安定して火持ちがよく、何よりコストパフォーマンスが抜群で一箱で20回以上は使える。カンテキで焼く焼肉屋でよく見かけるアレだ。
これでしばらく特訓していたが、火が進んで隙間が空くとそこに脂が落ちた時に火が上がりやすいという難点があった。鳥肉が炭から上がった炎で直接炙られると黒っぽい煤がつき、えぐみが出てしまう。某チェーン店などで「名物もも炭火焼」などと称して出てくるあの煤けた感じだ。火事も怖い。

ただ、それよりも大きな問題は、人工炭のためか肝心の煙が少しケミカルな匂いを発することだった。燻煙効果を求めて炭火を採用している以上これは看過できないので、奮発して土佐備長炭を試してみたところ、同じ炭でもこれほど違うものかと驚いた。清涼感のある上品な薫りで、焼き上がりの味わいも全く違う。


やっと求めていた正解にたどり着いたと喜んだが、コストがオガ炭の四倍くらいするのと、火力が落ちやすいという弱点があった。
お店のように大量に熾せれば炭同士が相乗的に火力を強めあって維持できるのかもしれないが、個人でちょっとずつ使う場合には二時間もしないうちに焼面の温度が露骨に下がってしまう。その都度バーナーで底部の炭に火を入れながら使っていたが面倒極まりない。

そこで、底部には高火力を維持できるオガ炭を敷き、肉からの脂を受けて煙を出す上部に備長炭を置いてみたところ、火力を保ちながら芳しい燻煙効果を得ることができた。
脂は全て備長炭が受けてくれるので火も上がらないし分量比はオガ炭3:備長炭1くらいなのでオール備長炭よりは経済的にも有利である。今のところ、このハイブリッドスタイルが個人が趣味の範囲で行う炭火焼鳥では程よい落とし所ではないかと思っている。


続いて、具体的な炭の取り扱いとそれに必要な什器類について考察を続ける。

2018年8月14日火曜日

排煙問題を乗り越える

先述したように、「炉ばた大将 炙家」が吐き出す大量の煙により家族から室内での使用禁止令を出された苦い経験を持つ私であったが、炭火による燻煙が焼鳥には不可欠であると知った以上は対処せざるを得ない。
煙を発生させながらその煙を生活区域に及ばせないための方策を探ったところ、最終的にキッチンのコンロに使わなくなったまな板を置き、その上に新聞紙を敷いて炭火のコンロを設置し、それを囲むようにレンジフードから新聞紙を垂らして隙間を養生テープで目張りするというスタイルにたどり着いた。なお、レンジフードや柱と接する新聞紙のエッジ部分には養生テープで補強を施し、繰り返し着脱できるようにしている。
文章でうまく伝えられる力量がないので、写真を載せておく。
この写真の状態より新聞紙の丈を短くしたり、目張りを怠ったりするとすぐにダイニングが煙まみれになったので、いまのところ我が家にとっての最適解はこれのようだ。



キッチンの換気機構は家庭によってまちまちだと思うのでベストアンサーはそれぞれ異なるだろうが、要はレンジフードなどの真下で焼き、そのまま煙を他へ漏らすことなく全て換気口へ誘導する仕組みを作るということである。手段は問わない。何かもっといい手があればぜひ教えてほしい。
ちなみに、この新聞紙も3ヶ月くらい使用していると内側部分が油でテッカテカになってくるので、排煙補助だけでなく、油脂の飛散防止にも役立っているようだ。

参考までに、実験段階で撮影していた排煙の記録映像も載せておく。


拙宅の狭さと汚さには目をつぶっていただくとして、ご覧の通り、煙はダイニングに漏れ出すことなく換気口に吸い込まれて行き、ベランダの排気口から水平に勢いよく吐き出され、隣家に及ぶこともない。

この単純な仕組みのおかげで、自宅の室内で炭火を熾して鳥を焼くという、あまり正気の沙汰とは思えない活動を家族に黙認してもらえているし、私の焼鳥を一歩次のステージに進めることができた。ノーベル焼鳥賞が新設された暁には、受賞候補の筆頭に挙がるだろうと期待している。

余談だが、一旦はお蔵入りした「炉ばた大将 炙家」の発する容赦ない煙幕に対しても見事に機能するので、たまに室内焼肉する時には活躍してもらっている(焼肉に関して言えば、経験上ガスと鉄板で焼く方が美味い)。



では、具体的にどんな炭を選べばいいのかを考えてみよう。

2018年8月13日月曜日

熱源について

室内での焼鳥で炭を使うのは抵抗がある、という人がほとんどだろうと思うし、私もそうだった。
しかし、いくつかの焼き器を乗り換えながらその結論に至ったのだが、焼鳥を焼くための熱源は、炭火以外にない。
先述の通り、私が初めて手にした焼き器は電熱線を使った「屋台横丁」(↓)だった。

屋台横丁

煙がほとんど出ないのは室内で焼く上で大きなメリットではあったが、火力が弱いのが難点であった。焼けるまでに時間がかかり、表面にほのかに焼き目がつく頃には水分が飛んで焼鳥ならではのジューシーさが失われてしまうのだ。

そこで火力を求めてガス方式の「炉ばた大将 炙家」に乗り換えた。たしかにこれは短時間で表面が焼けるので旨味を逃がすことはないが、とにかく煙が凄まじく、程なく家族から室内での使用禁止令が出た(したがって写真を撮る余裕などなかった)。

しばらくはエアコンの室外機を置くために設けられた一畳ほどの極小ベランダ的なスペースに持ち出して焼いていたが、あまりにも虚しく面倒なので次なる候補を入念に調べたところ、ガスの火力と無煙構造を両立した夢のようなロースター「セラグリル」(↓)の存在を知り、Amazonで即ポチした。

これは素晴らしかった。

構造上、火力は炙家にやや劣るものの煙がほとんど出ないので、ついに室内焼鳥の最終形態を見つけたりと、小躍りしながら来る日も来る日も焼き続けた。

セラグリル

ところが、人間の欲望には際限がないようで、最初は店で食べる焼鳥のイミテーションに甘んじていたはずが、いつしか店よりも美味い焼鳥を目指すようになっていた。
しかしそれにはあと一歩、何かが足りなかった。
その答えを素材や調味料など熱源以外に求めて研究を続けていたが、結局、求めていたラストピースは炭火であった。

理由は二つあり、一つはよく言われる遠赤効果で、これはガス方式でも火力調整を工夫することで擬似的にクリアできるのだが、もう一つの燻煙効果は炭火以外では絶対に得ることができない。実際に試してみて思い知ったが、ウバメガシの出す上品な煙でじっくりと燻されて初めて焼鳥はあの味になるのだ。
私の串とプロが出す串との、決定的な違いがここにあった。

土佐備長炭

改めて思うと、焼肉であれば炭火ではなくガスコンロを使う有名店も多いが、まともな焼鳥を出すお店で炭火以外を使っているところは見たことがない。
だが、それを自宅でやるとなると、私(とあなた)が家族から理解を得るためには、排煙問題を解決せねばならない。

私(わたくし)と焼鳥

昔、私の父親が足繁く通っていた焼鳥屋があった。
父親がその店のマスターと常連6,7人を家に呼んで新年会を催した時、彼らは当時小学五年生だった私に次々とビールを注ぎ、人生初の飲酒で頭痛と吐き気に襲われぐったりしている私を肴に夜半まで飲み続けていたという、そんなろくでもない大人たちが集まる店ではあったが、出てくる焼鳥はまさに絶品であった。
家族で外食、となるとたいていその店で、とてもテンションが上がった。
どの部位も美味しかったが、特にせせりとこころは食べるたびに心が震えた。
まあそれはやや言い過ぎではあるが、あの店が私を相当な焼鳥好きにしてしまった主因だったと、今にして思う。
とにかく、子供の頃から40過ぎの今に至るまで、私にとってのご馳走は常に焼鳥であったし、平均的な成人男性の焼鳥摂取量を100とすれば、私の場合400は軽く超えるであろう。

そんな私が、外で食べるだけに飽き足らず、家でまで鳥を焼き出したのは、2chのまとめかなにかで「屋台横丁」の存在を目にしたのがきっかけだった。電気式の機械で、見た目はおもちゃっぽいし実際焼くのにもすごく時間がかかるので、あくまで焼鳥屋さんごっこの域を出なかったが、それなりに雰囲気もあり、一人でちびちび楽しんでいた。
それがだんだんエスカレートし、ガスによる輻射熱でパワフルに焼ける「炉ばた大将 炙家」、一部マニアの間で有名な無煙ロースター「セラグリル」を経て、約一年前から備長炭での室内焼鳥を嗜んでいる。
まだまだ素人丸出しながら、ネットや書籍からの情報とよく行くお店での盗み見とイマジネーションと試行錯誤により、多少はノウハウが積み上げられてきたように思う。

以下は私が自宅で食べている鳥たちの一例だが、肉の捌き方や串の打ち方、味付けや仕上げなど、稚拙ながらもそれなりに工夫を凝らしているつもりである。


こころ(たれ)

手羽先、こころ、もも、つくね、背肝

肝のお造り


もものたたき

前置きが長くなったが、おそらく個人が自宅の室内で炭火焼鳥を楽しむための”いろは”がある程度体系的にまとめられたメディアは今のところないはずなので、ここではそれを目指したい。それが、今までに私の血肉となった数多の鳥たち(とこれからなるであろう鳥たち)への供養になればと、都合の良いことを考えている。