2018年9月20日木曜日

「もも」を仕込む

牛豚を含めた国内で流通する主要な精肉の中でも、鳥のもも肉ほど調理バリエーションが豊富な部位も少ないだろう。たたき・唐揚げ・チキン南蛮・照り焼き・蒸し鶏・水炊き・親子丼・油淋鶏・タンドリーチキンなどなど、どんな食べ方をしても抜群に美味いという、その汎用性の高さには神の意志をも感じるが、結局は串に刺して炭火で焼くのが一番であることは間違いない。

もも肉は産地によって複数の種類が売られていることが多い(いわゆる地鳥)。
私がお世話になってる鳥専門の精肉店でもいくつかの種類が置かれているが、最もお手頃なグラム138円の「かしわ」でも飛び上がるほど美味いのでいつもこれで満足している。

さて、もも肉は横に置いた時に1:2くらいの比率で明らかに左右の境目が分かると思うが、まずは大きい方を右にして境目に包丁を入れてみる。


右側の大きい方が、人間でいう膝から上の太もも部分、左側が膝から下のふくらはぎ部分である。まずは右側の太もも部分から処理していく。太もも部分を左に90度回して縦に置き、2.5cmくらいの間隔で切り分けていく。


それを横に戻し、端っこは切り落とし、厚みのある中心部を3.5cm幅程度に切り分ける。


串の手前側に切り落とした端っこの肉片を刺し、気持ち手前が小さく奥が大きくなるように身を選び、皮部分が奥(串の先端方向)になるように身を俎板に置いて指で押さえて串に刺していくと、太もも部分で四本ほどの串になる。これが「もも」である。もちろん間に玉葱を挟むことを忘れてはならない。



ふくらはぎ部分は、太ももと繊維の走り方が異なっており、同じやり方ではうまく打つことができないので、若干違ったアプローチをとる。まずは繊維に沿って縦に六等分し、それらをニコイチで、身は折りたたむように、皮はたるみが出ないように打つ。このふくらはぎ(すね肉)の串は「とうがらし」と呼ばれる。名前の由来は知らない。




一枚のもも肉から計七本ほどが取れる。この日のもも肉はやや小ぶりで一枚270g程度だったので、一本あたり53.2円である。他の部位に比べて原価はやや高いが誰に怒られるものでもないので気にしない。「もも」と「とうがらし」は食感がやや違うが、味は基本的にどちらも同じである。塩でもたれでも美味しく食べられるが、身と身の隙間に液体の入り込む余地の多い「もも」はたれ、大きな身のジューシーさが楽しめる「とうがらし」は塩で食べることが多い。




とうがらしは繊維の癖を理解するのが難しく、私がやると写真のように焼き上がりがやや歪になることがあるので、これからさらに研究を重ねていきたい。まさしく「串打ち三年 焼き一生」である。

なお、たれはもちろん自家製でめちゃくちゃ美味いのだが、これについては長くなりそうなので、たれと塩の話は回を改めたい。

ちなみに数日前のこの日は他にレバ刺し、せせり、こころ、こんにゃく、背肝、手羽先、つくね、子供ら用にうずらウインナーなど、家族の分も併せて60本ほど焼いたので、いくつか写真を載せておく。見た目はともかく、味は我ながら絶品である。これらの手順も追って見ていきたい。




2018年9月17日月曜日

偉大なる、玉葱

鳥肉を捌く前にやることがある。
玉葱の仕込みである。
だいぶ前に、福岡の有名店「藤よし」で見たのが最初だったと思うのだが、福岡では多くの店で、焼鳥の身と身の間に、ねぎまのような感覚で特に注意書きもなく玉葱を挟む。その時藤よしで撮った写真がこれだ。この玉葱が程よい口直しになって串が進むので、私も真似している(なお、一串あたりの鳥肉量は過剰だと個人的には思うのだが、ここでは措く)。


ここからは単に見よう見まねで辿り着いた手順なので、正統な福岡スタイルと差異があるかもしれない点をまずはご容赦頂きたいのだが、私の場合は2,30串に対して中サイズの玉葱の四分の一ほどを使う。まず玉葱を皮付きのまま縦半分に割り、上下を落として皮を剥き、90÷4=22.5度の傾きで四回包丁を入れてくし切りにする。その出来上がった四つのブロックを弧に対して垂直に二等分し、串に刺せる幅のあるものは水に晒し、刺せないほど細い残りの部分(玉葱の内側部分)はさらに細かくみじん切りにして容器に入れてラップしておく。このみじん切りの用途については後述する。






以前の記事でも書いたように、焼鳥は二口というのが私の持論なので、一口目と二口目の間に、くし切りにして水に晒した玉葱を一つか二つ挟む。以下の写真は、今日手羽先を串打ちした時の例である。




みじん切りにした玉葱についてだが、これは東京の、場所も名前も失念してしまった某店で覚えた。塩焼きの串に、みじん切りの玉葱とレモン汁(と若干の塩?)を和えた薬味を自分で乗せて食べるスタイルで、これもさっぱりとした清涼感に感銘を受けて以来取り入れている。手羽先の仕上げに使った例が以下である。身の大きさにあわせて、一口目には大胆に、二口目には繊細に施している。いつもながら、死ぬほど美味かった。



他にも、ももやむねのたたきなどには極薄のオニオンスライスを添えたりもするので、玉葱は焼鳥と不可分な関係にあると言えるだろう。ちなみに言うと、カレーでも玉葱は主役だ。誠に偉大な野菜である。

では、次からは鳥肉の各部位について具体的に串打ちの手順を考えていこう。
最初は、最もベーシックな「かしわ(もも肉)」だ。

2018年9月9日日曜日

串の準備

焼鳥における一串あたりの適正な鳥肉の量はどれくらいであろうか。
お店であれば、それぞれの経営哲学によってはじき出された売値と原価が決めるのであろうが、純粋な美意識という観点から言えば「二口で食べられる量」が理想ではないかと思う。


一口目で美味さに驚き、二口目でそれを再確認する。
まだ食べたいと思うも、舌に記憶だけを残して、串には何も残っていない。
仕方なくビールで喉を潤しながら余韻に浸る。
これぞ焼鳥の美学であろう。
長串にみっちり打たれた「じゃんぼ」な焼鳥では、一串食べ終わる前に飽きてしまう。

ちなみに、串の長さに対する身の比率については、見た目と持ちやすさの点から、身が串の半分くらいを占めるように打つのがちょうどいいだろう。


経験上、成人が二口でちょうど食べ終えられる量を串の真ん中あたりまで打つためには、15cmの串が適していると思われる。また、レバーや背肝などは丸串だと身が引っかからずにくるくる回って抜け落ちやすくなるので、断面が小さい正方形の角串をおすすめする。

結論としては、全長15cmで細身角型の竹串をAmazonで買えばよい。
私は何年か前に840本で481円(送料0円)のものを買った。つくづく安上がりな趣味である。


しかも、竹串は再利用可能だ。意外なことに、うまく扱えば年単位で保つ。
ポイントは、持ち手部分を炭火で焼け焦がさないことと、串先の鋭利さを維持することである。
持ち手を焦がさないためには、串を水に浸けておけばよい。仕込む3時間前くらいから、串の持ち手を下にして(つまり串の先端を上にして)長細い筒型のグラスかコップに入れて少なくとも半分以上は浸るまで水を注いでおく。こうすれば例え炭火で炙られようと簡単には焦げ落ちない。


また、串打ちの際に先端が身を突き破ってしまわないようギリギリのところで留めておけば、直接火に当たらないので串先の鋭利さは維持できる。万一熱にやられて串先が丸くなってしまっても、ガラス製の爪ヤスリなどで軽く削れば鋭利さは蘇る。ただし、当然短くなってしまうのであまり頻繁にはやらない方がいい。やはり串先を身から突き出さないようにするのが原則だ。


食べ終わった串はコップなどに刺しておき、片付けの時に軽く水洗いする。親指の爪を串の中程から先端へ向けて押し出すようにして残った身をしごき取り、水ですすいでキッチンペーパーの上で乾かせば良い。私の場合、一人で焼くときは20本前後、家族や知人と一緒の時は60〜80本くらい使うが、熱を受けた部分は黒くなるものの、限界を迎えてポキっと折れてしまう串は年に10本あるかないかである。今ある串を使い切るのに90年ほどかかる計算だ。年間5.34円、文字通りタダ同然のコストである。


では、串が準備できたところで、具材の処理について見ていこう。